発明の定義と用途発明

日本の特許法では、発明は技術的思想の創作と定義されています。発明が具体的なモノでないことは、各国特許法は共通の理解として持っているものの、ここまで発明を定義しているのは、日本とその影響を受けた韓国、台湾の特許法くらいでしょう。

発明を技術思想で捉えることの考えは、ドイツのコーラー博士に由来するものと思われます。日本の特許法は大正10年改正法でドイツ特許法型になり、昭和34年改正法で発明の定義が条文に入りました。

ただ、戦後、日本はアメリカ法の影響を受け、この昭和の改正法で進歩性の概念を入れるなど、アメリカ型にかなりシフトしています。なので、日本の特許法はハイブリッド型です。具体的なモノを中心に考える英米法に、概念で考えるドイツ法が根本にあるために、いろいろと不具合がでてきます。その違いは、用途発明の考えに顕著に表れます。

だいたい、構成要件に分節して考えるというのは、発明を物のパーツの結合として捉える考えが前提です。それ故に、部品でない「用途」を構成要件としては見ないというのが、アメリカです(イギリスも医薬を除いては、全く同じです。アメリカと)。日本の場合は、この「用途」を構成要件とみなしているので、医薬以外にも、用途限定した物を発明として認めるという特異な法体系となっています。

もっとも、物自体を発明をするのではなく、技術思想を創作するのであって、そうなると、客観的には、同じ物でも、ことなる発明が乱立するという、今の日本の状況になるのです(機能性表示食品などがいい例です)。

ここで、客観的というのは、要は、分析機器で分析しあっときに、物を区別し得るか?という問題で、用途などは、ラベルがはってあるから違うのであって、中身は、全部一緒である、つまり、客観的には同じということになります。

こんな発明を認めていたら、お互いの特許権がぶつかり合うなど、非常に面倒なことが起こります。